永井均

「道徳性なしには真の幸福はないのだとしても、それが単なる事実問題なら、多くの場合、概してそうである、というだけのことなのだから、道徳性ぬきで幸福であるような人も存在しうることにはなる。そして、もしそういう人がいたとしたら、そういう人に関しては、それでいいのだ、ということにならざるをえない。
逆にもし、道徳性は幸福にとって文字どおり内的な構成要素で、そのことに例外はありえないのだ、と言うなら、それは「幸福」という言葉を新しくそう定義してしまっただけのことだ。「幸福」という語の定義のなかに、道徳的な人だけがそれでありうるという意味が含まれている、ということになる。」(永井均「倫理とは何か」)


こういうことをさらっと書いてしまう永井均はやっぱり凄いなあ。